>>注意事項
報告書の特徴
健診の際記入して頂きました健診質問表と健診結果を用い、各々の健康上の問題点が明らかになるよう工夫しました。また”メタボリックシンドロームチェック”では特定健診・特定保健指導に則して,肥満と関連して危険因子が集積した人を判別し,その上流にある太りやすい生活習慣や下流にある動脈硬化に関連した臓器障害の有無を示しました。
肥満度(BMI)
肥満の人には,報告書に肥満度を示しました。また,減量するための1日の食事摂取量(標準体重に25kcalを乗じたカロリー)の目安を報告書Cに示しました。
血圧(高血圧)
収縮期血圧(最大血圧)140mmHg 以上または拡張期血圧(最小血圧)90以上を“高血圧”と判定し,また正常高値血圧(130以上140未満/85以上90未満)で危険因子のあるかたも高血圧治療ガイドライン2009に基づきリスクを表示しました。
脂質代謝(資質異常症)
LDLコレステロール(いわゆる悪玉)は直接法で測定しました。動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007版に基づき、危険因子の集積の程度から“Ⅰ:低リスク群”(A)、“Ⅱ:中リスク群”(B1,2)、“Ⅲ:高リスク群”(B3、4)、“冠疾患既応:二次予防群”(C)に分類しました。各々に管理目標値が決められていますのでLDLや中性脂肪がこの管理目標値よりも上回る場合やHDLコレステロール(いわゆる善玉)が管理目標値を下回る場合“脂質異常症”としました。
肝機能
肝炎ウイルスに関する情報の有無や,毎日飲酒しているか,肥満しているかを出来るだけ考慮しました。
糖代謝(糖尿病、耐糖能異常)
空腹時血糖、随時血糖(食後)やHbA1c(グリコヘモグロビン:採血前1~2ヶ月の血糖値を反映するといわれる)から健診判定基準ガイドラインに基づき判定しました。また平成25年4月よりHbA1c値の国際標準化に基づき従来の値(JDS値)に変わりNGSP値を表示しました。(NGSP値はJDS値が10%未満でJDS値より+0.4、10%以上で+0.5大きい値となります。)
腎機能(慢性腎臓病:CKD)
クレアチニンと年齢、性別から腎機能(推算糸球体濾過量:eGFR)を計算し蛋白尿の有無とあわせ、慢性腎臓病診療ガイドと健診判定基準ガイドライン2008に基づき判定しました。
血液検査
赤血球数,ヘモグロビン(血色素量),ヘマトクリットから,MCV(平均赤血球容積),MCH(平均赤血球血色素量),MCHC(平均赤血球血色素濃度)を計算し,貧血のある場合その種類の判定に利用しました。
健診報告書のめざすもの
健診報告書の役割は,生活習慣病としての高脂血症,高血圧,糖尿病などやがんなどの早期検出,早期発見と,生活習慣上の問題点をご自分で認識し,ご自分で修正改善して頂くための基礎的な資料(検査データとその医学的な解釈)を示すことです。
また特定健診では"メタボリックシンドロームチェック"により”肥満と関連した動脈硬化危険因子の集積”の度合いを示し,そのうち"減量するだけで生活習慣病の発病を回避できそうな方”に特定保健指導の場での強力な減量を促します。
報告書作成の背景について
健診結果の判定は,血液検査など各項目の“個々の”数値を,「人間ドック成績判定及び事後指導に関するガイドライン」(以下健診ガイドラインと呼びます)の基準値と照らし合わせて判定します。ある項目の数値が基準値を上回れば,その項目が“異常”であると判定します。
しかし,例えばコレステロールの場合の判定は単純ではありません。動脈硬化学会2002年のガイドラインによると,若い人でタバコも吸わず,糖尿病や高血圧もない方の基準値は240mg/dl未満と判定は“甘く”ていいのですが,中年以後,スモーカーで,糖尿病のある人は基準値を200mg/dl未満と“厳しく判定します.動脈硬化の危険因子をたくさんもっている方は動脈硬化の進行が早い可能性があるためより厳重なコレステロール値の管理が必要と言われているからです。生活習慣病の危険因子という観点から,各々違った背景をもつ受診者に各人の違いを加味した報告をするのはこれまで限界がありました。
健診報告書の限界と注意事項
1) 危険因子のカウントについて
タバコを今まで吸ったことにある方
質問表で,タバコを今まで吸ったことがあるにチェックをした方は,現在禁煙されている方でも危険因子があると見なしています。虚血性心疾患の死亡率が,非喫煙者を1としたとき,スモーカーで1.76倍であるところが,5年以上の禁煙で1.31倍まで低下するという報告(平山,1981)や,10-15年以上で非喫煙者と同等ともいわれており、禁煙の効果は確かにありますのでスモーカーの方は是非禁煙をお勧めします。
心血管病で治療中の方
質問表で,虚血性心疾患,閉塞性動脈硬化症,脳卒中などの罹患歴,虚血性心疾患の家族歴を拾いきれなかったり,健診時に検査されていないため危険因子が拾われなかったりすると,高血圧,高脂血症を過小評価してしまうことがあります。これらの疾患があるかたはより厳重に治療をされることをお勧めします。
危険因子の少ない方と多い方
年令と家族歴は修正することができませんが,その他の危険因子は生活習慣の修正で改善出来る余地があります。また最近の薬物療法の進歩で高血圧,高脂血症,糖尿病は十分コントロール可能となりました。中等リスク以下の高血圧やカテゴリーB2以下の高脂血症の方は生活習慣の修正,改善を十分おこなってください。高リスク群の高血圧やカテゴリーB3以上の高脂血症方の多くは薬物療法が必要となりますが,生活習慣の修正,改善をいっしょに行うことで相乗効果が期待できます。
2)肥満の判定
肥満の方への1日摂取カロリーの表示は目安です。筋肉労働の方は少し多めに,年配の方で不活発な人はこれよりさらに少なめにする必要があります。さらにカロリー制限に加え障り無ければ運動することも重要です。また最近内臓脂肪蓄積が生活習慣病と深く関わっていることが解りメタボリックシンドロームと呼ばれています。ウエスト周りが男性85cm以上,女性90cm以上の方では,内臓脂肪蓄積があると判定され生活習慣病の危険因子となりえますので測定してみてください。BMIでは肥満と判定されない方も同様です。
3)“定常状態”と経過観察~“調子が良くても“定期的な健診をお勧めします。
毎年健診の度に
・肝機能でALPや総ビリルビンのみが単独で高い
・血清アミラーゼが毎年少し高い
・リウマチ因子が(+)だが,精査しても異常がない
・白血球が高値域または低値域
・女性で尿潜血がいつも(+)
などの方がおられます。報告書では以前と同等の異常値に対しても,ガイドラインの基準値どおりに判定します。体調もよくかつこれらの異常値に対して十分な精密検査を行っても全く異常のない方にとってはご自身のいわば”定常状態“といえます。
一方,すべての検査項目基準値範囲内にあっても,少し調子が悪いと感じ,検査項目が基準値範囲内だが低値域から高値域へ変化した,病院で検査したら病気が見つかったといったことも起こりえます。これらの例のように,健診は自分の“弱点”を見つけ意識することに加え,定期的に続けることで,自分の“定常状態”と経年変化を知ることにも役立てて下さい。
4)症状のある方はかかりつけ医へ受診を!
学校の”通知簿”の成績が人のすべての評価ではないのと同じように,限られた項目で行われる健診結果もまたその人の健康を完全に表しえるものではありません。時には受診やもっと高度な精密検査が必要になることもあります。症状のある方は,健診報告で異常が無くとも該当する診療科を受診することをお勧めします。また健診後の健康相談も行っていますのでご利用下さい。